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中島京子 (1964〜)

1.作品リスト      2.感想・内容メモ

Noタイトル出版年memo
01だいじなことはみんなアメリカの小学校に教わった
(改題)ココ・マッカリーナの机
1999.3
2006.4
エッセイ
02ライターの仕事1999.10
03自然と環境にかかわる仕事2000.8
04FUTON2003.5
05イトウの恋2005.3
06さようなら、コタツ2005.5短編集
07ココ・マッカリーナのしみこみしみこむえほん2005.9
08ツアー19892006.5
09均ちゃんの失踪2006.11
10桐畑家の縁談2007.3
11冠・婚・葬・祭2007.9
12平成大家族2008.2
13ハブテトル ハブテトラン2008.12
14エ/ン/ジ/ン
(改題)宇宙エンジン
2009.2
2012.8

15女中譚2009.8
16小さいおうち2010.5直木賞
17エルニーニョ2010.12
18花桃実桃2011.2
19東京観光2011.8
20眺望絶佳2012.1短編集
21のろのろ歩け2012.9
22妻が椎茸だったころ2013.11短編集/泉鏡花賞
23かたづの!2014.8
24パスティス: 大人のアリスと三月兎のお茶会2014.11
25長いお別れ2015.5
26彼女に関する十二章2016.5
27ゴースト2017.8短編集
28樽とタタン2018.2
29夢見る帝国図書館2019.5紫式部文学賞
30キッドの運命2019.12短編集
31ムーンライトイン2021.3
32やさしい猫2021.8
アンソロジー
■放課後(ピュアフル文庫 2007.7)
 「ゴセイト」収録
■Re-born はじまりの一歩(実業之日本社文庫 2010.12)
 「コワリョーフの鼻」収録
■ファイン/キュート 素敵かわいい作品選(ちくま文庫 2015.5)
 「妻が椎茸だったころ」収録
■黒い結婚 白い結婚(講談社 2017.3)
 「家猫」収録

感想・メモ
01 ココ・マッカリーナの机
著者は作家になる前、いきなり仕事を辞めて日本文化を紹介する教師交換プログラムでアメリカへ。仕事に追われた毎日だったのが、この留学で彼女の人生は変わった。『だいじなことはみんなアメリカの小学校に教わった』の改題・加筆したもの(その題名だとアメリカ万歳な本かと思いそう)。三歳児から中二までを相手の様々な出来事などアメリカでの体験記。この手のエッセイ、昔は山ほど読んだな〜。「つあ!」「アイ・ガーリ!」「アイ・ドンゲリ」面白いね。カルチャーとは他の国の人々のことを理解すること、ね。
06 さようなら、コタツ
“部屋の数だけ人生がある” まさにその通りな短編集。1篇目「ハッピー・アニバーサリー」は途中で彼女らの関係に意表をつかれ、という事はやはり『小さいおうち』はそういう話だったのか、と思う。傍から見るとただの部屋、特に何も変わったこともなく見えるものの後ろには、人それぞれの思いや人生が潜んでいる。最後は「私は彼らのやさしい声を聞く」、穏やかな雰囲気に包まれながら...。
08 ツアー 1989
2006年刊。全く心当たりのない人からの手紙。親しげに自分の名が書かれているが、その呼び方をする知人はいない。内容は正に自分の事だが、全く違う箇所もある。書かれたのは15年前、それも香港。確かに香港を訪れた事はある。でも…。1989年から92年に催行された『迷子つきツアー』帰りに一人いなくなる団体旅行。消えるのは印象の薄い人物。目が覚めるとパスポートを取られツアーに置いて帰られた地味な青年。犯罪なのか、何故自分の事を知っているのか、記憶が違う?記憶を盗まれた?謎めいていてモヤモヤっとする不思議な話。

突然無理やり休暇を取らされたバブル期の猛烈サラリーマン。「香港に三泊ってどういう事だ?これは特命か?なにがラッキーセブンなんだ?」勤続7年目だからラッキーセブン・リフレッシュ休暇。参加するのは「グルメな香港三泊の旅」。同期に聞くと「おまえもラッキーセブンか。ああ「ふれあいソウル四日間」だ。渡辺はすごいぞ、「台湾魅惑のお茶めぐり」だそうだ。くそ忙しいのによ」笑える
16 小さいおうち
良かった。なのに感想を書くのが非常に難しい。小さいおうちのタキさんと時子奥様の世界。それはsacred/secured。聖なるもの/守られたもの。読んでいるこちらもいつまでもそうであって欲しいと思ってしまう。文章はまるで本当に戦前の事を思い出して今書いているかの様。どういう意味だったのか色々と考える事あり。
18 花桃実桃
とても楽しい読み物だった。43歳独身の茜は会社員から一転、ザ・昭和なアパート「花桃荘」の大家さんに…というあらすじからは分からない面白さ。所々ツボってしまって可笑しかくて。ユーモラスなだけでなく、微妙な年齢ならではの人生や未来。中島京子さんの作品の主人公はご本人と同年齢の事が多く、若者が40代の人物を描く作品に抱くような違和感もなく、無理をしたり気取ったりしたところがないので自然でリアル、だからより一層面白いではなかろうか。茜さんの兄の台詞、「ウイボンって、おまえ、フランス語じゃ、ねえんだから」に笑った。
19 眺望絶佳
短編集。眺望良し。【往信】/アフリカハゲコウの唄/倉庫の男/よろず化けます/亀のギデアと土偶のふとっちょくん/今日はなんだか特別な日/金粉/おさななじみ/キッズのための英会話教室/眺望良し。【復信】
 中島京子の文章が好き。そして書くものもなんか良い。不思議な魅力。切なさ、郷愁、そして共感。東京タワー「わたしたちは立ち続けなければなりません」。ブロンディ―の曲が気になって調べてしまった。他の固有名詞も実在のものばかり。
21 妻が椎茸だったころ
短編5篇。どれもラストがピリッと効いていて面白い。「偏愛」短編集とも書かれている通り、ちょっと奇妙な人たちの話でもある。「リズ・イェセンスカのゆるされざる新鮮な出会い」悪天候のため帰国の乗換便を一人で待つ事になったオレゴンの田舎で出会った老婦人。まさかこういう展開とは。「ラフレシアナ」これもオチが面白かった。「妻が椎茸だったころ」いい話! 温泉宿で出会った石マニアの奇妙な男「蔵篠猿宿パラサイト」と、亡くなった伯母の家での話「ハクビシンを飼う」はちょっと似た雰囲気。泉鏡花賞受賞作。
26 彼女に関する十二章
面白かった。伊藤整の『女性に関する十二章』をモチーフとした普通のアラフィフ主婦聖子さんの十二章。言動や脳内ツッコミに時々吹き出してしまいそうだった。穏やかな夫、守さんも良いね。調整ボランティア片瀬さんなどキャラも面白く、“種蒔く人”とか表現も可笑しい。「ちええ」
「今日は明日とは違う一日で、それぞれ新しいことを体験する、それを知るだけでも意味はあるんだ」
27 ゴースト
短編7話。幽霊に会ったのか、記憶の風景を一緒に見たのか。記憶の〜と言うのが中島京子さんらしい。他に、古道具屋にあった“心臓”のないミシンが自ら辿ってきた過去を語る話など。戦争は遠い遠い昔話なのではなくて、今と同じ様に人びとが生きて暮らしていたのだと思わせられるちょっと物悲しくもある物語。幽霊という意味でも戦争という意味でも八月に相応しい一冊だった。親が子を思う気持ち、健気な子どもたちの姿に胸がきゅっとする。
 原宿の家/ミシンの履歴/きららの紙飛行機/亡霊たち/キャンプ/廃墟/ゴーストライター。

 うちの足踏みミシンもSingerだった。ずしりと重いあのボディ。そう、忘れていたけれど、本体は天板の中に収納できていた。木で出来た台、倒して広げる板の部分、左右の引き出し。あのミシンには様々な思いや過去が詰まってた。
 きららの前に現れたケンタが思った以上に歳若いという事に途中で気づきハッとした。二人が並んで座った姿はとても小さい。何とも切ない。/リョウユーの亡霊たち。ラストに「えっ?」/こちらの世界とあちらの世界。お互いに色々な事を思っているのだろうか。
28 樽とタタン
連作短編9篇。30年以上前、小学校の帰りに毎日通っていた喫茶店。赤い樽の上が指定席。老小説家、神主、バヤイなど常連客からは「タタン」と呼ばれていたその頃の物語。他の中島京子さんの作品と比べるとちょっと物足りない感じもしたけれど、「ぱっと消えてぴっと入る」、草野球に誘われるのが嫌な学生さんの話、ミライから来た女性の話がよかった。

「はくい・なを」さんの一日/ずっと前からここにいる/もう一度、愛してくれませんか/ぱっと消えてぴっと入る/町内会の草野球チーム/バヤイの孤独/サンタ・クロースとしもやけ/カニと怪獣と青い目のボール/さもなきゃ死ぬかどっちか
29 夢見る帝国図書館
上野公園のベンチで出会った自由奔放な喜和子さん。電話のない喜和子さんと会うのはふらりと訪ねるか手紙。そんな彼女から帝国図書館が主人公の小説を書く事を頼まれる。喜和子さんの図書館への愛。主人公と喜和子さんとの交流と交互に描かれる図書館の物語。自由と思っていた喜和子さんの意外な過去。最初は歴史部分にあまり興味が持て無かったが後半引き込まれていった。上野は「いつだって、いろんな人を受け入れてきた場所」。戦後や女性の生き難さ。辛さ。世の中すべての人が自由に生きられますように。現在の国際こども図書館も訪ねてみたい。
30 キッドの運命
短編集。近未来の話が6篇。昔はフィクションと思っていたSFや漫画が実現している今日この頃、どの話も大いにありうる世界に感じた。少し前に読んだ多和田葉子「献灯使」を思い出す(あれ程不安な気持ちにはならないけれど)。「ベンジャミン」似てない姉弟。「ふたたび自然に戻るとき」廃墟の高層階に住む老人とカラス。凄い話ながらなぜかそれで良いという気持ちも。「キッドの運命」予想通り。「種の名前」瑠璃おばあちゃんの田舎生活、こんな風にありたい。「赤ちゃん泥棒」そういう事もあっても良いかも。結果良し。「チョイス」ため息。
31 ムーンライトイン
自転車旅の青年が雨の夜に泊まったのは高原の寂れた町にある元ペンション。オーナーの虹之助老人、高齢で車椅子のかおるさん、家事担当?の塔子さん、フィリピン人のマリー・ジョイ。皆訳あり、というかそれぞれ秘密を抱えている。最後は丸く…かと思ったらまさかの。しかし「その先」があるのだ。ただのハッピーエンディングよりも良いのかも。若くなくたってガッツがある。夢がある。恋がある。自分のために幸福な人生を送ろう。
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